実は疲労研究の先進国「お疲れ様の国 日本」

第1章:「お疲れ様」はもはや国技です
「お疲れ様です。」
もはや日本でこの言葉を言わない日は、祝日でも年末年始でもなかなか存在しません。出勤すれば「お疲れ様」、会議終われば「お疲れ様」、たとえ缶コーヒー取りに給湯室行っただけでも「お疲れ様」。
──って、何にそんなにお疲れなんですか皆さん。
しかもよく考えてみてください。「お疲れ様」は、“疲れ”という状態に対して、「様」って……最高敬語です。たとえば「社長様」「神様」「閻魔様」など、そうそうたるメンバーと同じカテゴリに「疲れ」がランクインしてるわけです。これ、けっこうな異常事態です。
海外では、疲れてる人に対して”Good job!”(よくやった!)とか、”Take a break.”(ちょっと休めよ)とか、せいぜい”Hang in there!”(がんばれ)程度。日本みたいに「疲れ様」なんて、疲労そのものに人格を与えて拝み倒すような国は他にありません。
でも私たち日本人は、「疲れている=努力している」という不文律を小学校の給食より先に学びます。さらに、疲れている人ほど偉い、忙しい人がカッコいい、なんなら“残業自慢”ですら武士のような誇りを持って披露されることも。
例:「昨日?寝てねえよ。3時間しか寝てねえ。しかも移動中に会議2本な。」
…いや、もうそれはただの過労死ルートです。やめて。
第2章:江戸から続く「疲れ崇拝国家」
この「お疲れ様」文化、実はかなり古いです。ルーツをたどると江戸時代まで遡るんだとか。
江戸時代後期、職人たちが一日の仕事を終えると、互いに「お疲れでやんした」と声をかけていたそうです。あら、粋だねぇ。でもこれ、ただの挨拶というより“労働を称える儀式”に近かったようで、まさに「疲労は神聖なる証拠」という精神が宿っていたわけです。
ちなみに私は昔、友人の結婚式で新郎新婦の父が「娘と息子の門出にあたり、心より“お疲れ様”を申し上げます」と言ったのを聞いて、披露宴でコーヒー吹きそうになったことがあります。もはや祝辞すら“労”で表現。日本、疲れ愛しすぎ。
第3章:脳疲労というパンドラの箱を開けた日本人
そんな“疲労を称える国民性”が背景にあるせいか、日本は実は世界屈指の「疲労研究先進国」なんです。
え?「アメリカじゃなくて?」って?
ノンノン、疲労の本場はTOKYOなんですよ。
たとえば『ほんまでっかTV』でお馴染み、梶本修身先生。彼が打ち出した理論がすごい。「疲労は脳から来る!」という、まさに疲労界のコペルニクス的転回。
それまで「筋肉が張る」とか「乳酸が〜」とか、身体レベルで語られていた疲労の本質が、「脳の中枢が休めって言ってるだけです」と明言されたことで、全日本ワーカホリック協会(※非実在)は騒然となったわけです。
しかも、この“脳の疲労”をなんと数値化までしちゃった研究者がいる。大阪公立大学の近藤一博先生です。
彼の研究によって、実際に脳疲労の度合いを測定するバイオマーカーが開発され、「疲れてる気がする」ではなく「あなた、今ガチで疲れてます(by検査)」という未来が到来したんです。
もはや「体調不良で休みます」ではなく、「脳の疲労値がレッドゾーンに達したのでテレワークに切り替えます」って言える時代がくるかもしれません。最高か。
第4章:「肩が凝る」は日本語でしか言えない?
ここで一旦、国語の話をしましょう。
「肩が凝る」って言葉、英語でなんて訳すと思いますか?
“Stiff shoulders”とか”Shoulder tension”みたいに訳されるんですが──どっか違和感ありませんか?
実はこれ、日本語独特の“身体感覚を言語化する能力”が世界トップレベルにあるからなんです。
他にもあります。「腰が重い」「だるい」「抜けない疲れ」……。これらは英語には一対一で対応する表現がないんです。欧米人に「腰が重い」と言っても、「そりゃ太ったんじゃない?」って返されることも。
さらに衝撃的な事実として、夏目漱石が小説で初めて「肩が凝る」と書いたのが、この言葉の起源。そう、文豪が“肩凝り”を世に出したんです。ありがとう、漱石先生。現代の整体業界はあなたに足を向けて寝られません。
第5章:「お疲れ様」には未来がある
ここまで読むと、疲労を過剰に崇め奉る文化ってちょっと変…と思うかもしれません。でも逆に、疲労をここまで丁寧に扱ってきたからこそ、日本は「世界の疲労最前線」にいるのかもしれません。
疲労は悪者じゃありません。むしろ「あなた、ちょっと頑張りすぎよ?」と教えてくれる、心と体からの大事なメッセージ。
それに気づく力を、日本語と日本文化はちゃんと持ってるんです。
そして私たちが「お疲れ様」と言うたびに、それはただの挨拶じゃなく、「あなたの努力に敬意を表します」「休む権利、あるよ」というメッセージかもしれません。
だから今日もこう言いましょう。
「お疲れ様でした──そして、休みましょう。」
読み終えたあなたにこそ、全力で。
お疲れ様です!